WOWOWで放送されていた(と言っても随分前ですが…)、「Behind the Mask」を観ました。
ミュージカル『オペラ座の怪人』が出来るまでを関係者が回想するもので、超貴重なドキュメンタリー映像と共に、アンドリュー・ロイド=ウェバー、キャメロン・マッキントッシュ、ハロルド・プリンス、リチャード・スティルゴーらによって、制作秘話が語られています。
ガストン・ルルーの小説『オペラ座の怪人』は、1925年にロン・チェイニー主演で映画化されて以来、映画化、TVドラマ化を重ねてきました。そんな中、1984年にケン・ヒル版『オペラ座の怪人』が上演されることになり、ロイド=ウェバーの当時の妻サラ・ブライトマンに出演の依頼が。結局サラはこの依頼を受けなかったのですが、その後、ニューヨークのブックフェアに立ち寄ったロイド=ウェバーは、ルルーの原作小説と運命的に出会います。
人に愛されたことのない醜い作曲家が、本人より前にその若い女性の歌声に惚れ込むというストーリーが、ロイド=ウェバーのサラへの愛とリンクして、彼はこの物語に大いに共感しました。こうしてこの偉大なミュージカルの制作が始まったのです。
ロイド=ウェバーが作曲した候補曲の中に、なんと「Love Changes Everything」、のちに『アスペクツ・オブ・ラブ』のテーマ曲となったメロディーがありました。逆に『アスペクツ・オブ・ラブ』の中で使う予定だった「Married Man」という曲がファントムのアリア「Music of the Night」として使われたと言うのですから驚きです。もし、最初の予定通り、「Love Changes Everything」のメロディーが『オペラ座の怪人』で歌われていたり、「Music of the Night」のメロディーを持つ「Married Man」というナンバーが『アスペクツ・オブ・ラブ』の中で使われていたら…。それぞれがどんなミュージカルになったか想像も付きません。
1985年に、シドモントンのロイド=ウェバーの別荘、その敷地内にある小さな劇場で、第1幕のみの試演会が行われました。番組ではその貴重な映像が流れますが、「Think of Me」「Music of the Night」「All I Ask of You」などの歌詞が今と違うのです。なんだかロマンチックじゃないなぁ、と思いました。それもそのはず、スティルゴーは恋愛モノが苦手。そこで起用されたのが、当時は全くの新人だったチャールズ・ハートでした。結局全体の80%がハート、20%がスティルゴーの歌詞となりましたが、ウィットに富んだ歌詞を書くのが得意なスティルゴーの歌詞は、劇場支配人たちのナンバーで聴くことが出来ます。
1986年夏、シドモントンで2回目の試演会が行われ、プロモーション映像も流れるようになりました。クリスティーヌ役はサラ・ブライトマン、ファントム役にはロックシンガー、スティーブ・ハーレー。ロック歌手とは意外な気もしますが、ロイド=ウェバーによると、この作品の音楽には実はロックの要素が詰まっているのだそうです。しかし、初日(10月9日)の2ヶ月前に、ハーレーは降板。コメディ俳優だったマイケル・クロフォードがファントム役に大抜擢されたのです。
ところで、マリア・ビョルンソンの美術もミュージカルの魅力を語る上で欠かせません。地下の湖から蝋燭が浮かび上がるシーンの素晴らしさや、落ちてくるシャンデリア…。スティルゴーによるとシャンデリアの落ちる速度で国民性がわかるのだそうで、オーストラリアでは時速150キロで落ちて頭上でピタッと止まるらしいです(^^;
『キャッツ』の振付家であり、ロイヤルバレエ出身で、ロンドンのオペラハウスに住んでいたことがあるジリアン・リン。自分の経験を基にしたバレエシーンの振付は楽しかったと語ります。苦労したのは「マスカレード」。ダンサーが150人必要なこのシーン、ダミーがいるのはもう有名ですよね。人形に軽く触れながらダンサーが踊るので、ダミーたちも動いているように見えるのだそうです。
初日を迎えた後は、ウェストエンドからブロードウェイに進出(NYのマジェスティック劇場がちょっと映った!懐かしい!)。トニー賞も7部門受賞(最優秀作品賞、最優秀ミュージカル演出賞…ハロルド・プリンス、最優秀セット・デザイン賞…マリア・ビョルンソン、最優秀コスチューム賞…マリア・ビョルンソン、最優秀舞台照明賞…アンドリュー・ブリッジ、最優秀ミュージカル主演男優賞…マイケル・クロフォード、最優秀ミュージカル助演女優賞…ジュディ・ケイ)。
その後、6大陸の20以上の国で上演され、世界で最も成功したミュージカルの一つとなったのです。
ミュージカル作品作りの素晴らしさがわかる、興味深いドキュメントでした。また『オペラ座の怪人』が観たくなっちゃった…。
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